こんにちは、ねこじまです。
みなさんは「Urban Exploration (Urbex)」という言葉をご存じでしょうか。
Urbexとは都市探検(Urban Exploration)を意味する活動である
SNSとガジェットの進化により近年世界中に広がっている
プレイス・ハッキングとも呼ばれ、未知領域の「再符号化」を意味している

今回は欧米で人気のUrbexについて紹介するよ!
Urban Explorationの歴史と現在

Urbex…響きはかっこいいけど、どんな意味なんだろう?
Urban Explorationとは、廃墟や地下施設などの人工構造物を探検する活動である。歴史的関心や写真撮影と深い関係性を持ち、しばしば身体的な危険や法的な処罰を伴う。
別称:Urbex / UE / roof-and-tunnel hacking / building hacking / draining / etc
引用:Wikipedia, 訳:ねこじま
アーバン・エクスプロレーション、もしくは「都市探検」。
高層ビルをパルクールで華麗に駆け抜けたり、
地下施設の迷路を探検したり、
廃墟で写真を撮ったり。
「高所×地下×廃墟」。
そんな「未知なる領域」に足を踏み入れて、暴く。そんな活動が世界中で盛り上がっています。
Ninjaliciousが提唱した、「Urban Exploration」という概念
そんなUrbexの誕生は、一つの本から。
カナダの都市探検家「Ninjalicious(ニンジャリシス)」が2005年に執筆した、『Access All Areas(全面交通許可)』で提唱された概念です。
ちょっと内容をのぞいてみましょう。
第1章:はじめに
第2章:採用(Recruiting)
第3章:忍び方(Sneaking)
第4章:対人心理学(Social Engineering)
第5章:準備(Preparing)
…
引用:Access All Areas, 訳:ねこじま
もともとは都市探検のガイドブックに過ぎなかったこちらの本ですが、その概念自体を提唱した人が今までいなかったため、現在都市探検家にとってはバイブル的な著書として知られています。

Urbexはココから始まったんだね!
Urbexの人気沸騰。その裏にはガジェットとSNSの進化
でも、やはり一部のマニアでしか流行らなさそうなこの行為。
そんなUrbexが、なぜ世界的に注目を集めるようになったのでしょうか。
ここは手っ取り早くプロに聞いた方が早い…ということで、写真家の佐藤健寿さんに登場してもらいましょう。

佐藤さんこんにちは!Urbexはなぜこんなに注目されるようになったの?

もともと廃墟とか都市探検っていうのはすごくローカルな楽しみだったわけです。観光スポットとして認知されているものじゃないから、地元の人たちがこっそり探検するような。でも、SNSが発達したことで、世界に散らばっている同好の士がお互いに情報交換したり、アテンドしあったりできるコミュニティがつくれるようになったんですよね。

たしかに、「#urbex」で検索すると色々出てくるね。でも、もっと理由がありそう!

あとはガジェットやインフラの発達も大きいです。廃墟ってほとんどが地図にも載っていないような場所ばかりなので、これまでは行けないところがたくさんあった。でも、GPS技術が発達して、スマートフォンを持っていれば誰でも場所を特定できるようになったじゃないですか。それで結構危ないところに1人で行ってもちゃんと帰ってこれるようになった。

技術発達も関係してるのか!というと、たしかにGoProみたいなアクションカメラで危険な場所も楽に撮影できるようになったね。あとは、デジカメも昔と比べて、暗い場所や障害物の多い場所でも安定した画質で撮影できるようになった。

こうして技術的にプロとアマチュアの差が縮まれば、あとはもう行動力の問題になります。そこで既に撮影しつくされている観光地の絶景とは違う、身近に存在する「秘境」に目が向いているんじゃないかと。
SNSとガジェットの発達により、ローカルだった都市探索がグローバル化した。そんな風に言い変えることもできますね。

佐藤健寿さんのインタビューは、ここからもっと見れるよ!
Urbexが持つ可能性:プレイス・ハッキングと権力への対抗
さて、当然ながらそんなUrbexの多くは違法行為に当たります。
事実、いろいろなUrbexコミュニティがある中で、一部は立入禁止区域における破壊活動を主な活動領域としています。ただし、これは実はUrban Explorationの暗黙のルールに反している。
Take nothing but pictures, leave nothing but footprints
(撮[と]るなら写真を、残すなら足跡を)
不法侵入という意味では多くの探検家が法に触れていることになりますが、彼らの多くが望むのは、少なくとも破壊活動ではない。
「プレイス・ハッキング」を通じた、未知領域の現実化
冒頭でも述べたように、Urbexのテーマは「未知なる領域を暴く」ということ。
Google Map / Street Viewというツールで地球が丸裸にされてしまった今では、「秘境」なんてものは存在しないというのが一般的な解釈です。
ただし、誰も立ち入ることのできない禁止区域だったり、身体的リスクを伴う危険な場所だったり、あるいは人の記憶から忘れられた空間だったり。
「誰も見たことのない景色」というのは、視点を変えれば実は身近に存在しているのです。
そんなUrbexをただの趣味から、「プレイス・ハッキング」という概念にまで広げたのが、イギリスの都市探検家Bradley Garrett(ブラッドリー・ギャレット)。
隠された、もしくは忘れられた閉鎖空間を、現実的なものとして「再符号化」する(The recoding of closed, secret, hidden and forgotten urban spaces to make them realms of opportunity.)
引用:Explore Everything: Place-Hacking the City, 訳:ねこじま
為政者の愚行を”暴く”-ジャーナリズム的側面も

でも、「ハッキング」ってなんだか攻撃的だなぁ。パソコンみたい。
そう、この「ハッキング」には2つの意味が込められています。「侵入する / 乗っ取る」という意味でのハッキングと、「問題解決」という意味でのハッキングです。
前者は、先ほど説明したように未知領域に侵入して、開拓するという意味合いで使われますね。
そして後者は、どちらかといえば世界の「負」の歴史に焦点を当てて、民衆に向けて暴くという行為。ジャーナリズム的な文脈を持っています。
実は先ほどのBradley Garrett氏は、世界的に有名な「LCC(London Consolidation Crew)」というプレイス・ハッカー集団の一員。2016年には仲間と一緒にロンドンの富裕層エリアに侵入し、「公共空間の私物化」に対する抗議として、劇場をプレイス・ハッキングしています。
2012年にもすでに逮捕を経験していますが、仲間のジャーナリストからは「プレイス・ハッカーたちは、都市はやはり市民のものであることを再確認させてくれる」と新聞で弁護を受けています。

Urban Explorationとは?まとめ
振り返りましょう。
Urbexとは都市探検(Urban Exploration)を意味する活動である
SNSとガジェットの進化により近年世界中に広がっている
プレイス・ハッキングとも呼ばれ、未知領域の「再符号化」を意味している
マニアックな活動として誕生したUrbex。
しかし、技術発達などを通して世界中に広がり、「未知領域を暴く」以外にも、ジャーナリズム的な性質を持つようになっていった。
これはねこじまの私見ですが、日本の廃墟はあまりこういった文脈で認識されることはないなと感じています。それが良いか悪いかは別として、廃墟の魅力は「美しい」や「ノスタルジック」という言葉だけではまとめられないのかもしれませんね。

最近はマニアックな内容ばっかりだよ~
comments
ねこじまさん、こんにちは。
毎回楽しく勉強になる記事をありがとうございます!
ねこじまさんのお陰でURBEXへの興味が湧きました。近々カメラを片手にどこかへ探検しに行ってみようかなと思います。
これからも応援しております(^ ^)
むーるさん
コメントありがとうございます、ねこじまです!
こんなマニアックな記事でURBEXに興味を持っていただいて光栄です(^^)
廃墟と違って、URBEXは(場合によりますが)合法だし、自分にとって未知な場所であればどこでもURBEXの対象になると思います。
どんどん行っちゃってください!